新店舗「ルイヴィトン 銀座並木通り店」で限定発売される新生「バッグ ウィズ ホールズ」。
多くの応募があったに違いないだろうが、オリジナルは2014年に発売された縦長トート「バッグ ウィズ ホールズ(BAG WITH HOLES)」。直訳すると「穴が空いたバッグ」。
「サービスのS、満足のM」とはよく言ったものだが、歪に均衡が保たれたその2者の関係性は、ファッションにおいてはコラボ商品でたまに散見される。川久保玲が空けた穴の価値とは。
期待を裏切らない川久保のサービス精神は、1982年秋冬のパリコレで披露され、デザイナーとしての名を世に知らしめた「穴あきニット」を彷彿とさせるクリエイティブに明らかだ。
自慢のファブリックにあれだけ痛快に穴をあけられたコラボ依頼側の「ルイヴィトン(LOUIS VUITTON)」も、さぞ満たされたに違いない。
そもそものコラボ誕生の背景を説明すると、この異形なるトートバッグは、「ルイ・ヴィトン」が誇る「モノグラム・モチーフ」を6人の世界的クリエイターが独自のデザインで商品化するという仰天企画「The Icon and the Iconoclasts」の一貫だった。
そう、聖像破壊・偶像破壊を意味するイコノクラスム(Iconoclasts)を冠にするコラボ企画なんぞ、クリエイティブ太っ腹すぎて頼まれる方が恐縮してしまう無茶ぶりだろう。ちなみに期待に応えすぎたデザインは世間的にはセクシー過ぎて、当時は普通に買えた。
参加クリエイターは、川久保玲のほか、クリスチャン・ルブタン、シンディ・シャーマン、フランク・ゲーリー、マーク・ニューソン、そして故カール・ラガーフェルドの6P。
このイコノクラスムへの参加は「コムデギャルソン」ではなく個人としての「Rei Kawakubo」名義。
このステイタスでの協業は珍しい。
この「バッグ ウィズ ホールズ」を広義のギャルソンコラボと数えるか否かは微妙なところだが、既に2008年夏に正式なブランド同士のコラボは済んでいる。今は無き表参道の「青山TWO」跡地にて、ギャルソン仕切りの期間限定ストアとしてオープンした「LOUIS VUITTON at COMME des GARCONS」が両社にとって極めて重要なマイルストーンだったと言える。
その6年後、川久保個人のコラボとして2014年10月15日に発売された「バッグ ウィズ ホールズ」の価格は291,000円。
他の5人と比較しても、税抜20万円台という価格設定は良心的だった。
以下、川久保玲の公式コメント(2014年当時)から抜粋。
「このプロジェクトにおいてまず大前提としたコンセプトは、伝統的なルイ・ヴィトンのモノグラムを破壊するということです。それは、新しいもの、新しい価値を発見するということでもありました」
むろん穴の開いたバッグなど機能面すら怪しい。
が、「モノグラムを破壊する」というキラーワードには、ろくでもなき素晴らしきセカイの住人にとって、腹の底に迫る強烈な愉快があった。
私自身もその1人だったが、まるで踏み絵のごとく、コム デ ギャルソン社では購入社員や元社員が続出したのだった。もちろん、こちらは私物。
横幅33cm・縦幅42cm・奥行14cmの手頃なサイズで、付属するコットン製の巾着は外すことも可能。
素のモノグラム・キャンバスの素材感と、収納物が中から見える様を楽しめる。耐久性と機能性も十分で、放り込んだ物が穴から落ちてしまったことなど両手で数えるくらいしかない。
インバッグのポーチがもはやバッグ本体と言って差し支えないが、バッグ本体を包装するために用意された「R.K.」のイニシャル入り大型巾着袋がもう1つ付いていた。
1点だけ、「イメージと違うんですけど」とドーバーの店員にお遊びでクレームを入れた箇所がある。
発売前にリリースされた公式ヴィジュアルでは華奢なモデルが持ち手に細腕を通していたのだが、購入した現物は成人男子にとってはよもやよもやの小さき穴で貫通できなかったからだ。
無理矢理にでも肩掛け仕様にすべく、モノグラム・キャンバスの上部を内側に折り曲げて持ち手の穴を広げるという、破壊の愉悦を自らも堪能したのだった。
その苦労は、2021年に復刻リデザイン(非公式)で販売される「バッグ ウィズ ホールズ」にはあてはまらないかもしれない。
2021年3月20日(土・祝)にグランドオープンを迎える新店舗「ルイ・ヴィトン 銀座並木通り店」で抽選のうえ限定発売される新生「バッグ ウィズ ホールズ」は、素材が変更され、大きさが2タイプに増え、価格が倍近くになった。
まぁ、価値があるか激論中のビットコインが爆上げする世の中を考えれば、貴重なこのアイテムが倍の値段あたりで収まったことに感謝しましょう。
オリジナルと同サイズの「MM(Moyen Modele)」(横幅33cm・縦幅42cm・奥行14cm/510,000円)に加え、新規で追加された小ぶりの「PM(Petit Modele)」(W27xW31xD12.5cm/468,000円)に熱視線。この「PM」にのみ、なんとなんと取り外し可能なショルダーが付属するのだ。
これでトリッキーなことをせずとも大柄男子も怯むことなく使える。
ブラックカラーの「モノグラム・アンプラントレザー」は、グレインカウハイドレザーにモノグラム・パターンをエンボス加工で施したワントーンの美麗ファブリック。
それを破壊するなど、川久保玲ならではの発想であり、川久保玲だからこそ許されるデザインだ。
紛うことなき2021年春夏の裏トレンドは「穴」であり、ウィメンズの2021年春夏では新生「プラダ(PRADA)」の穴がその先陣。
図らずも続いた川久保玲の穴から見通せる景色は、2014年には想像できないほどにブラックに縁どられている。
魅惑の黒ベースはオリジナルのモノグラム・キャンバスよりも合わせやすそう。
「ルイ・ヴィトン 銀座並木通り店」界隈は祝賀ムードに沸きそう。
ついでに2014年度版オリジナルも二次流通市場で高騰しそう。
もし、ショルダー付きとの交換を持ち掛けられたならば、相性次第でサービスしてしまうかもしれない。
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